
FIELD REPORT HONG KONG 2026
日本人はiFX EXPOに行くべきか? 香港2026で見た世界の熱量と日本の現在地
海外FXレビュー編集部|現地取材:2026年10月8日|香港・HKCEC
「日本勢は、どこにいる?」
2026年10月8日、香港。iFX EXPO Asia 2026の展示会場を歩きながら、ふと浮かんだ問いがある。
日本語を耳にする機会は、想像していたよりもずっと少ない。しかし、会場に活気がなかったわけではない。赤いカーペットの先では企業の担当者と来場者が話し込み、頭上には世界的なブランドの看板が並ぶ。少し歩くと、ステージではAIの将来をめぐる議論が行われていた。
ここには、単に「どのFX会社がいいか」を比べるだけでは見えてこない産業の姿がある。
ネットで情報が手に入る時代に、わざわざ香港まで行く意味はあるのか。日本人は、iFX EXPOに行くべきなのか。
10月8日に見た会場の光景と、香港滞在中に業界関係者と直接会った経験をもとに、率直に考えてみたい。

香港へ。「画面の外」の金融都市
香港国際空港から中心街へは、MTRの空港鉄道「エアポート・エクスプレス」をはじめ、バスやタクシーなど、さまざまな交通手段がそろう。目的地や荷物に合わせて移動手段を選べる利便性の高さも、香港の魅力だ。
香港に到着した夜、まず印象に残ったのは、二階建てバスと街の明かりだった。隙間なく立ち並ぶビル、次々に視界を横切る看板。通りを歩けば、金融都市の整った顔と、雑踏のエネルギーがすぐ隣にある。


FXの情報を調べるだけなら、パソコンの前から動く必要はない。スプレッドや口座タイプは一覧で比較できる。ライセンスも、契約法人も、公式情報をたどれば一定の確認ができる。
それでも、資料を読んでいるだけでは分かりにくいことがある。今、世界の企業はどんな人と出会おうとし、何に投資し、どんな課題を話し合っているのか。 その輪郭をつかむには、足を運ぶ価値があるのではないか。
ブローカーだけではない。会場に並ぶ「取引の裏側」
iFX EXPO Asia 2026は、香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開催された。10月7日はウェルカムパーティーなど、展示会本体は10月8日と9日。編集部が展示会場を取材したのは、10月8日の一日のみだ。
主催者が10月16日に発表した会期全体の実績は、来場者5,000人超、出展企業150社超、登壇者120人超、参加国130か国超。これは展示会2日間の主催者発表値であり、8日単日の集計ではない。主催者発表を掲載したレポート
会場への案内には、赤い「iFX EXPO ASIA」と招き猫、そして「8–9 October 2026 / HALL 3FG」。そこから展示フロアへ進むと、あらためて気づく。集まっているのはFXブローカーだけではない。


ブローカー、取引プラットフォーム、流動性プロバイダー、決済会社、AI・分析サービス、デジタル資産事業者、IBやアフィリエイト。立場は異なっても、一つのサービスを成立させるためにそれぞれが役割を担っている。
個人トレーダーが普段目にするのは、多くの場合、価格チャートと注文ボタンだ。しかし、その背後には価格配信、約定、資金の受け払い、本人確認、顧客サポート、情報管理という長い工程がある。iFX EXPOは「FX会社を見に行く場所」というより、その産業の全体像を見に行く場所だった。
INFINOX、EBC、Bitget。企業が競っていたのは何か
黄色と黒を大胆に使ったINFINOXのブースは、遠くからでも目に入る。大型映像を背景に、担当者と来場者が言葉を交わしていた。オンラインのウェブサイトでは画面の一部でしかないブランドが、会場では人が集まる空間そのものになっている。

EBC Financial Groupのスペースでは、FCバルセロナとの関係を前面に打ち出し、トロフィーを展示。現地取材では、スペインから持ち込まれた実物のトロフィーとして確認した。スポーツとの結びつきが、企業の認知をどう高めるかを考えさせる演出だった。

Bitgetのエリアでも、人が集まり、担当者と来場者が会話を重ねていた。こうした展示が同じ会場に並ぶこと自体、FXとデジタル資産、決済、金融テクノロジーの距離が近づいていることを考える材料になる。

もちろん、ここで誤解してはいけない。豪華なブースや著名ブランドとの提携は、顧客資産の安全性、約定品質、日本での提供の適法性を保証しない。 華やかな演出は企業の姿勢を知る一つの材料であり、契約判断は別の検証が必要だ。
しかし、画面越しには「ロゴ」だった企業が、現地では「直接話せる相手」になる。この違いは小さくない。
AIの議論が目立った。焦点は「儲かるAI」だけではない
今回、とくに印象に残ったテーマがAIだ。講演や会場での議論にはAIに関する話題が多かった。取材写真のステージには、「AI Meets Finance: Who Is Actually Winning the AI Race?」というパネルの題名も確認できる。

AIと聞くと「価格を予測するシステム」「自動売買で利益を狙う仕組み」を連想しやすい。しかし、業界にとってのAIはそれだけではない。多言語での顧客対応、膨大な情報の整理、不正検知やリスク管理の補助、業務の自動化、取引ツールの使いやすさ。顧客が注文する前後の体験そのものを変える可能性がある。
たとえば、海外ブローカーの説明は、契約先の法人によって微妙に異なる。人が探すと時間のかかる規約の相違点を、AIが整理して提示する。IBが複数企業の情報を把握するときにも、問い合わせの仕分けや資料の要約は助けになり得る。
ただし、AIがまとめた説明と、契約書や公的登録に記載された事実は同じではない。AIの価値は「何でも正しく判断できる」ことではなく、人が確かめるための作業をどこまで良くできるかにあると考える。
主催者は同じ時期、金融におけるAI活用をテーマとするiFX Hackも実施し、10月8日に最終審査を予定していた。AIが業界全体の話題になっていたことを示す、もう一つの動きだ。iFX Hackの主催者告知(2026年9月29日)
※上記の利用例は編集部による業界分析であり、特定の登壇者の発言を引用したものではない。
見逃されがちな主役、決済事業者。入金ボタンの向こう側
そしてもう一つ、実際に会場を歩いて強く意識したのが、決済インフラの存在感だった。
トレーダーがブローカーを比較するとき、スプレッドやボーナス、最大レバレッジが先に目に入る。しかし、いざ口座を使おうとすれば、資金をどう入れるか、どう出すかが避けて通れない。

会場に決済関連の事業者が集まるのは、偶然ではない。ブローカーの裏側では、カード決済、銀行送金、地域別の決済サービス、電子ウォレット、法令と提供条件に応じたデジタル資産関連の決済・送金など、複数の技術や事業者の選択肢が検討される。主催者も、決済とステーブルコインを当年の主要な議論の一つとして挙げている。開催後レポート
重要なのは、ブローカーが提供している方法が、世界の決済サービスのすべてではないということだ。 事業者側にはさまざまな技術や提携先の候補がある。その違いが、利用者の入出金体験や海外展開のしやすさにも影響し得る。
では、何を比較するべきか。単に「入金が速い」だけでは足りない。入金と出金の両方に対応するか、対象となる国・法人はどこか、通貨と換算レート、手数料、処理時間、決済失敗時の扱い、本人確認・マネーロンダリング対策、資金の管理方法。こうした条件がそろって、初めて実用性を評価できる。
ここには利用者と事業者で異なる視点がある。IBやブローカーは、自社の提供地域や事業内容に適合する決済事業者・技術を比較検討できる場合がある。一方、個人トレーダーが任意の決済会社を使って、ブローカー指定の本人確認や入出金ルールを飛ばせるわけではない。実際の入出金は、契約先ブローカーが正式に対応する方法と規約に従う必要がある。
iFXで見えてくるのは、「どこに口座を開くか」だけではなく、その口座を支える仕組みにも違いがあるという事実だ。
メールやオンライン会議では埋まらない距離
香港滞在中には、展示会場の取材に加え、複数社の社長や代表者と直接会い、取材する機会があった。Lirunexの代表へのインタビューも、その一つだ。
詳しい発言内容や個別の提携条件は、裏付けを整理したうえで別の記事として扱いたい。ここで重要なのは、特定企業の名前を挙げること以上に、資料の先にいる相手と、直接同じ場所で話せることだ。
資料に記された「対応予定」は、どの地域を指すのか。パートナー制度の「支援」とは、どんな範囲なのか。担当者に実際に会うと、ウェブサイトの定型文だけでは掴みにくい問いを、目の前で確認できる。そして、答えは帰国後に契約書や公開資料で照合できる。
一回の面談で商談が成立するわけではない。むしろ、最初の面談を帰国後の検証や協議につなげることが本当のスタートだ。名刺の枚数よりも、その後に何を確かめ、誰と継続して話せるか。現地に行く価値は、そこにあると思う。
会場では、金融カンファレンスらしい討論だけでなく、香港らしい獅子舞の演出もあった。色鮮やかな舞を、来場者がスマートフォンに収めている。ビジネスの場に開催地の文化が重なる光景は、国際イベントがただの商談室ではないことを思い出させる。

「日本勢はどこにいる?」この違和感をどう受け止めるか
会場で日本語を耳にする機会は、やはり少なかった。取材で接した関係者からも、日本人の参加が特に少ないという声を聞いた。
ただし、これは10月8日の一日を歩いた取材者の観察と、関係者から聞いた感想である。日本人の国籍別来場者数を集計したものではない。英語で商談する日本人がいた可能性も、9日の状況が違った可能性もある。日本企業の参加がゼロだった、という意味では決してない。
それでも、問いは残る。
国内に成熟したFX市場がある日本は、世界規模の対話にどれほど顔を出せているのだろうか。
日本の事業者には、日本固有の規制や顧客保護、実務上の事情がある。渡航費、言語、出展の費用対効果も無視できない。「参加が少なく感じた=日本の業界が弱い」と短絡するのはフェアではない。
一方で、海外で進む技術や決済の変化を知らないまま、国内だけで市場を語るのも危うい。AIの導入が進み、決済手段は多様化し、異業種の事業者が同じ展示会に集まる。そこで交わされる問いは、いずれ日本の利用者や事業者にも関係してくる。
国内市場を深く知っていることと、海外の変化を肌で知っていることは、両立できる。
日本の強みを外の世界と結びつけるためにこそ、現場へ出る意味があるのではないか。
iFX EXPOに行くべき人、必ずしも行かなくていい人
ここで最初の問いを、立場別に整理したい。
IB・アフィリエイト事業者
参加価値は高い。 ブローカー担当者だけでなく、決済・CRM・技術支援など周辺分野にも会えるからだ。ただし、報酬率の大きさだけで決めず、契約法人、対象地域、顧客保護、報酬の確定条件、費用負担、法令適合性まで確認したい。
ブローカー・決済会社・開発者・経営者
目的が明確なら、強くおすすめできる。 同じフロアで違う技術や取引モデルを比べ、担当者と直接話せる。決済なら対応国・入出金・コンプライアンス、AIなら精度や運用管理、技術なら導入負荷や保守体制など、比較するべき軸を持って行くと成果につながりやすい。
個人トレーダー・FX初心者
全員が行く必要はない。 取引条件やリスク管理を学ぶ目的だけなら、まず公表資料や国内の学習機会で十分な場合がある。ただし、業界を仕事として知りたい、発信や研究をしたい、金融テクノロジーに興味がある人にとっては、新しい視点を得られるだろう。
次回参加するなら、最低限これだけは準備したい
- 会う目的を先に決める――出展一覧から候補を絞り、可能なら事前に面談を予約する。
- 質問を具体化する――提供地域、契約法人、決済経路、システム接続、費用、サポート、規制対応などを聞く。
- その場で決め切らない――魅力的な営業説明ほど、帰国後に規約と公的情報を照合する。
- 帰国後につなぐ――担当者、会話の要点、次に確認する資料を記録し、連絡を継続する。
会場で過ごした時間の価値は、帰国後の行動によって変わる。
結論。画面越しでは、届かないものがある
香港の夜、ビクトリア・ハーバーの海面にビルの明かりが映る。展示会場で交わされていた言葉や、すれ違った人たちの表情を思い返した。

10月8日の会場で、日本語を聞く機会は少なかった。だからといって、日本のFX業界の将来を悲観したいわけではない。
日本の中で積み重ねてきた知識を、世界の現場で確かめる。そこで初めて、見えてくる選択肢がある。 AIの議論も、決済事業者の存在も、経営者との面談も、そのことを教えてくれた。
日本人は、iFX EXPOに行くべきか。
趣味で相場を見るすべての人に勧めるわけではない。しかし、海外FXやフィンテックの現場で、新しい出会いや事業の可能性を探したい人には、自信を持って伝えたい。
行くべきだ。世界を知るには、画面越しでは足りない。
本文写真:海外FXレビュー編集部撮影。展示会場は2026年10月8日、市街写真は香港滞在中の記録。
